現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
今日は、日経朝刊11面のフジテレビの記事からです。
【記事要約】
・フジテレビジョンは米グーグルのインターネット動画サイト「You Tube(ユーチューブ)」で、テレビ放送したアニメや報道、娯楽番組を無料配信する。まずは1日平均2時間程度を配信。
・ユーチューブの活用については、民放キー局各社やNHKはすでに公式ページを開設しているが、配信するのは番組宣伝用の動画などに限定していた。視聴者のネットシフトが進む中、戦略を転換する。
・テレビ広告が減少する中、ネット広告でも稼ぐ。本格的な無料配信は国内の放送局で初めて。
・放送局はこれまで、ネットを通じてドラマなどを有料配信していた。無料配信にすると、テレビの視聴者数やテレビ広告の価値に影響するとして、広告主が懸念する可能性もある。だが、フジテレビはコンテンツをネットでも配信することでテレビ番組の認知度が高まると期待している。
・スマートフォンの普及などで増えるネットの視聴者や広告の獲得を狙う動きが加速しそうだ。
近年、スマートフォンを中心としたモバイルネット端末が急速に普及し、情報が溢れる時代になりました。従来は、情報取得手段がテレビや新聞などが中心だったところ、ネットにつなげばいくらでも情報を瞬時に入手することができるようになりましたね。まさに高度情報化社会です。
こうした環境の中、若者を中心としたテレビ離れが加速、テレビの広告収入を事業の柱とする民放各社の収益を圧迫しています。
そして、テレビ業界の事業構造の変化が進む中、フジテレビがネット広告を取りにいく動きができてきました。
放送業界は初めて取り上げるため、まずは民放5社のステータス見てみます。
<民放5社のステータス>
フジメディアHD | TBSHD | 日本テレビ放送網 | テレビ朝日 | テレビ東京HD | |
証券番号 |
4676 |
9401 | 9404 | 9409 | 9413 |
予想売上高 (百万円) |
583,500 |
344,500 |
300,500 |
237,500 |
109,992 |
予想営業利益 (百万円) |
30,300 |
10,500 |
29,300 |
9,000 |
2,350 |
予想経常利益 (百万円) |
32,000 |
12,500 |
34,000 |
11,000 |
2,691 |
予想当期純利益 (百万円) |
14,700 |
11,000 |
19,300 |
6,000 |
1,750 |
予想営業利益率(%) | 5.19 | 3.04 | 9.75 | 3.78 | 2.13 |
年度個社財務情報 | |||||
年度比較財務情報 | |||||
四半期個社財務情報 |
|||||
四半期比較財務情報 |
※予想決算情報は平成24年3月期の数値
フジテレビを中心とするフジメディアホールディングスが売上高規模では圧倒しています。フジテレビは放送事業での売上高の大きさもさることながら、ポニーキャニオンなどの映像音楽事業やディノスなどの生活情報事業など多事業展開しているためと思われます。
一方、利益率では、日本テレビ放送網が高いですね。財務データベースをご覧いただけるとわかるのですが、ここ数年の日本テレビの利益率はかなり改善しています。番組制作の削減などコスト削減効果が大きいと思われます。
ちなみに参考までにNHK(日本放送協会)の損益状況は以下のとおり。
<NHK22年度損益状況>
・経常事業収入:681,201百万円
・経常事業収支差額:28,753百万円
・当期事業収支差額:1,936百万円
(日本放送協会平成22年度業務報告書より)
NHKの事業規模は大きいですね。
最後に今回の記事で登場したフジテレビを抱えるフジメディアHDの近年の業績を俯瞰してみます。
<フジメディアHD 売上高・段階損益推移>
売上高は横ばいです。一方、段階損益は2010年3月期までは悪化していましたが、ここ2期で持ち直しています。
売上高が横ばいですから、考えれれる要因はコスト削減か、収益構造の変化ですね。
そこで、さらにセグメント情報を見て、見ることにします。
<フジメディアHD セグメント別売上高・営業損益推移>
やはり、テレビ関連を主とする放送事業は完全にジリ貧ですね。今回の記事でも指摘しているように視聴者のネットシフトによる要因が大きいのでしょうか。
一方、放送事業の利益率はここ2期で改善していますので、番組制作費などのカットなどのコスト削減の効果が大きいと予測されます。
また、2012年3月期は生活情報事業も利益に貢献しています。ディノスやセシールなどの通販事業が好調なのと、ワンピースカーナビなどワンピースグッズの効果も大きいようです。
【セグメントの内容】
「放送事業」はテレビ放送事業及びラジオ放送事業、「制作事業」は放送番組の企画制作・技術・中継等、「映像音楽事業」はオーディオ・ビデオソフト等の製造販売、音楽著作権管理等、「生活情報事業」は通信販売、新聞発行等、「広告事業」は広告等の事業を含む。
2010年までゴールデン(19時~22時)、プライム(19時~23時)、全日(6時~24時)の視聴率で7期連続の三冠王を達成していたフジテレビですが、2011年は日本テレビが三冠王を奪取しました。
7年連続のフジテレビでさえ、放送事業の売上高が落ち込んでいるのですから、テレビ広告の落ち込みは業界全体の問題であることがわかります。
ちなみに、各社の有価証券報告書のセグメントの関連情報として「主要な顧客ごとの情報」という開示項目があります。
平成23年3月期 | フジメディアHD | TBSHD | 日本テレビ放送網 | テレビ朝日 | テレビ東京HD |
対電通の売上高(百万円) |
130,819 |
92,388 | 開示なし | 88,372 | 39,894 |
対博報堂DYメディアパートナーズの売上高(百万円) |
71,595 |
45,266 | 開示なし | 42,209 | 開示なし |
連結売上高に対する上記広告代理店大手2社への売上高の割合 |
34.32% |
40.16% | 不明 | 55.47% | 37.17% |
※日本テレビ放送網は、連結売上高の10%以上を占める顧客(広告主)が存在しないため、記載を省略している
(有価証券報告書のセグメント情報より)
この情報を見てみると、大手広告代理店である「電通」と「博報堂DYメディアパートナーズ」のテレビ広告業界での強さも確認できますが、テレビ広告の落ち込みは広告代理店大手にも大きな痛手であることもわかります。
実際、先月には広告代理店大手2社がネット事業強化のため新組織を立ち上げた記事がありましたね。
情報の奴隷化といわれるくらいに情報が溢れている現代社会。消費者の情報の取り方も多様化し、今後は民放各社もビジネスモデルの見直しが迫られる時代が来るのかもしれませんね。
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。