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今日は、日経朝刊9面の日産工場の記事の話題から。
<2012年4月6日 日経9面要約記事>
・日産自動車は九州への生産シフトを加速。生産子会社で7月から小型車「ノート」の生産を開始。2012年度は国内の5割超に引き上げる。
・九州は韓国や中国に近い地の利があり、低価格の海外部品調達が容易。調達コストを削減し、国内生産の維持を目指す。
・門司港と上海を結ぶコンテナ船を利用すれば40時間で部品が調達できる。中韓の部品メーカーから大量の部品を安価に調達。国際的なハブ港である釜山港とも定期航路があり、調達のグローバル化が可能。
・九州の地場メーカーとアジア地域からの調達を合わせて8割に高める。
・日産以外にも、トヨタ、ダイハツが増産を検討。
・国内部品各社も国境超えたコスト競争となる。このため生産拠点を九州シフトで輸送費やリードタイムの削減を目指す。自動車プレス部品製造の大森製作所は大分県内に新工場、車体部品製造のアステアは福岡県に工場建設に着手。
・それでも、中韓のコスト競争力があり、部品メーカー自体がアジア調達を増やしたり、単独でのコスト低減策が企業努力を超えるようであれば、業過の淘汰・再編につながる可能性がある。
<記事要約ここまで>
完成品メーカーの部品調達に関連する投資戦略の記事ですが、様々な産業頂点にいる完成品メーカーの戦略によって部品メーカーも戦略の転換を求められる典型的な内容といえます。
今日はちょっと視点を変えて、非財務的な観点からザックリと考察してみます。
◆九州における工場群
皆さんも御承知のとおり、九州地域は工場地帯として昔から栄えている地域です。
九州にある工場は、自動車工場だけでなく、代表的なものには新日鉄の八幡製鉄所をはじめ、化学大手の工場もあり、ロッテやキリンビールといった食品工場もあります。
車に関しても、トヨタやダイハツ、日産の工場がすでに多くあり、完成品だけでなく、エンジンなどの部品生産の工場もあります。
旭硝子の自動車用安全ガラスの製造工場であったり、デンソーのカーエアコン工場、タイやのブリジストン工場、日立化成の合成樹脂自動車部品工場など、車の部材に関連する工場も数多くあります。
九州でも、様々な工場地帯として栄えているのはもちろん福岡県ですね。
それでも、長崎は三菱重工業の造船所、大分はキヤノンの工場、宮崎には旭化成の繊維工場、また、宮崎・鹿児島には電子デバイス系のパナソニックやソニー、京セラ、富士通などの工場があります。
ちなみに、佐賀はSUMCOのシリコンウェハー工場、熊本にはホンダの二輪工場があります。
さて、そんな九州の立地ですが、日経にも地図が掲載されていたとおり、半径1,000キロメートルに東京だけでなく上海・大連が入ってきます。
<九州から半径1,000キロメートルの地図>
【リソース】Google Map
こうやって地図でみると、九州の立地は非常に良いことがわかりますね。
日経の記事には部品調達をメインに書いて理ましたが、製品の消費地域である東京・大阪はもちろん、上海や北京まで見えてるとなれば、出荷する立地としてもナカナカの立地であるのがわかりますね。
経済産業省の九州経済産業局の平成23年の1月~12月の九州の工場立地動向調査のレポートで、「立地地点選定理由」の統計が出ていました。
【リソース】平成24年3月30日九州経済産業局「平成23年(1 月~12 月)九州の工場立地動向調査(速報)」
これをみると、「本社・他の自社工場への近接性」が最も多い理由であるのは、毎年変わりません。
ここで注目したいのは、平成23年の第3位に「市場への近接性」というものです。
詳しいことは筆者はわかりませんが、中国・韓国を含めたアジア・マーケットも視野に入れた近接性の表れである可能性がありますね。
いわゆる7重苦というもので苦しんでいる日本の製造業は、どんどん海外生産へシフトしていきます。
それでも、国内産業の空洞化・雇用の空洞化を防ぎ、内需を維持していくためにも国内生産拠点の維持は課題と言えます。
九州新幹線も開通しましたし、九州の立地が再確認される可能性が高くなってきましたね。
今後も様々な企業の生産拠点の意思決定に注目していきたいですね。
以上
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