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今日の日経朝刊9面に、外食大手がアジアに大量出店することを目的に現地向けのセントラルキッチンの設置の記事が掲載されていたので、その話題から。
<2012年1月26日 日経朝刊9面の要約>
・大手外食各社がアジアに現地向けの食材製造・加工拠点を設ける。製造・加工拠点から複数の店舗に食材を供給し、店舗運営を効率化。
・サイゼリヤは広東省広州市に建築面積3千平方メートルの食材加工工場を設ける。同社は中国本殿店舗網を2011年8月期末で約80店までに伸ばしており、2012年8月期も40店~50点を出店する計画。中国事業の売上高利益率は2.4%で日本の11.9%と比べ低い。
・居酒屋大手のワタミも台湾で新工場を稼働させる。ラーメンチェーンの幸楽苑もタイ進出に合わせて、バンコク郊外で食材加工工場を稼働。
・アジアでは経済成長に伴い外食市場も大幅な成長が見込まれる。ただ、中国での売上上位はケンタッキーの欧米勢が優勢。アジアでの競争力を高めるには出店拡大による低価格化が欠かせず、現地工場を作る動きは広がりそう。
<記事はここまで>
外食業界の日本市場では右肩下がり続き、市場規模は縮小の一途をたどっています。
市場規模の縮小だけでなく、競争も激化しており、店舗の過剰供給や低価格指向もあって苦戦を強いられています。
このため、外食産業にとって中国・台湾・タイといったアジア新興国への進出は重要な経営課題となっています。
◆サイゼリヤ、ワタミ、幸楽苑のステータス
上記の日経記事に掲載された3社のステータスは以下のとおりです。
サイゼリヤ | ワタミ | 幸楽苑 | ||||
証券番号 |
7581 |
7522 | 7554 | |||
業態 |
ファミレス |
居酒屋(介護) | ラーメン | |||
直近売上高(百万円) |
99,860 |
123,877 | 33,932 | |||
直近営業利益(百万円) | 11,552 | 7,246 | 1,959 | |||
直近営業利益率(%) | 11.57 | 5.85 | 5.97 | |||
個社年度財務情報(当社財務DBより) | ||||||
比較年度財務情報(当社財務DBより) |
■サイゼリヤの営業状況
サイゼリヤのセグメント報告単位は、「日本」「豪州」「中国」となっています。
2011年8月現在では、947店舗を展開しており、国内882店・海外65店となっています。
セグメント売上高をみると、外部顧客への売上高として日本で95,416百万円、豪州で32百万円、中国4,411百万円となっており、日本での売上が約95%となっています。
「豪州」はセグメント間の内部売上高又は振替高として3,706百万円で、豪州のセントラルキッチンの売上になります。
サイゼリヤの海外店のほとんどは中国として考えられ、中国の店舗数もまだ少ない状況といえます。
また、日本セグメントでの営業利益率が11.8%であるのに対し、中国セグメントでは営業利益率が2.3%とであることからも、海外店舗での営業利益率の低さが目立ちます。
これは日経の記事にも掲載されていたとおり、日本が埼玉、神奈川、福島、兵庫、豪州のセントラルキッチン体制を構築しているのに対し、中国では店舗での調理等が行われていることが要因かと考えられます。
売上高と営業利益率の直近指標は以下のとおりです。
売上高は1兆円手前で成長が鈍化しているのがわかります。直近は横ばいとなっていることがわかります。
■ワタミの状況
ワタミは、「和民」ブランドで展開している居酒屋チェーンです。
国内売上高が90%以上であることから、地域ごとのセグメント情報は開示されていません。
ワタミの最大の特徴的なのは、居酒屋以外に介護ビジネスと高齢者向け宅配ビジネスを展開しているところです。
ワタミのセグメント情報は以下のとおりです。
セグメント名 | セグメント売上高 | セグメント利益 | 売上高営業利益率 | 売上高割合 |
国内外食 | 80,850 | 4,269 | 5.28% | 65.26% |
介護 | 22,265 | 3,869 | 17.37% | 17.97% |
高齢者向け宅配 | 15,497 | 1,356 | 8.75% | 12.50% |
その他 | 9,324 | △203 | ー | 7.52% |
調整額 | △4,060 | △2,046 | ー | △3.27% |
合計 | 123,877 | 7,246 | 5.84% | 100.00% |
国内外食セグメントは約65%で、「介護」と「高齢者向け宅配」で約30%を占めています。
「介護」セグメントでは17%と高い営業利益率を達成し、全体の営業利益でも約53%を占めているので、ワタミの介護ビジネスはワタミの重要なセクターといえます。
また、「飲食」と「介護」のミックス系の事業として、「高齢者向け宅配」ビジネスも好調に展開できており、前期売上100億円から1.5倍の150億円まで伸ばしており、利益も全体営業利益の約18%を占めるなど、順調に拡大していることがわかります。
直近の平成24年3月期の第2四半期においても、「介護」セグメントは136億円、「高齢者向け宅配」セグメントで112億円なので、拡大基調は続いていることがわかります。
飲食では、日経の記事にあるように、日本型のセントラルキッチン設置をめざし、台湾で展開することを試みています。
国内では神奈川、埼玉に仕込みセンターを設置しています。
■幸楽苑の状況
幸楽苑は、ラーメン事業を中心に展開する外食ビジネスです。
製品及びサービスごとの情報や地域ごとの情報は、単一・日本を中心とするためセグメント開示はありません。
福島、神奈川、京都に製麺と餃子のセントラルキッチンを設けており利益率を高めています。
直近の売上と営業利益率の推移は以下のとおりです。
以前のBizBlogでも触れたように、飲食業界は非常に激戦です。
内需が先細り、人口減が見えている中で、次の一手は必要でしょう。
以上
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