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今日は、昨日の日経朝刊1面に掲載された、スマートメータ導入の記事についての話題から。
BizBlogでもたびたび登場してきたスマートグリッド関連の話題ですが、いよいよスマートグリッドの本格導入への1歩が始まってきました。
今日の日経朝刊1面でも東京電力の火力発電分離の記事が掲載され、具体的な再始動の形が提案されつつあります。
<2012年1月22日 日経朝刊1面の要約>
・電力使用の効率化を促すスマートメーター(次世代電力計)について、東京電力の導入計画では、2018年度までに約1700万台とほぼ全世帯に設置する。原子力損害賠償支援機構と3月末にまとめる総合特別事業計画に盛り込む
・系列企業中心の割高な調達を改め、国内外の企業に門戸を開く入札に切り替え、コストを抑制。機構は、資器材の主な調達先が競争原理の働きにくい系列企業であることが高コストの要因だとして東電に改善を求め、入札制度を導入することとなった。
・国内外を問わない入札制度によって、「1台当たり2万~3万円の見込み」(関係者)を、1台当たり1万円程度と国際的な平均価格並みに抑えたい考え。
<記事ここまで>
「スマートメーター」とは、スマートグリッドに欠かせない次世代電力計で、効率的な電力使用を実現するために、電力供給量をコントロールする基礎となる電力量を計測し、それをEMS(Energy Management System)を通じて電力供給サイドへ情報発信していくものです。
スマートメーターの詳しい業界状況や内容については、以下のブログを参考にしてください。
■2011年12月29日 シンガポールの電力計大手 大崎電気がTOB
◆代替エネルギーとしてのLNG
「スマートグリッド構想」はオバマ政権の「グリーン・ニューディール政策」によって一躍脚光を浴びたものです。
エネルギー資源の確保とエネルギーの効率的利用は、エネルギー政策の重要課題です。
世界的にも、再生可能な自然エネルギーへの代替など活発な議論が行われていますが、
現在の日本は福島第一原発事故を契機に、原子力エネルギーに代わる代替エネルギーの議論が本格的に活発化してきています。
東京電力の賠償問題や「発送電の分離」といった政治的な課題も多く、このBizBlogでは議論の余るところですが。。。
今日(2012年1月23日)の日経でも発電、送電(ネットワーク)、営業販売のカンパニー制度の導入を検討する記事が出ており、そういった議論も本格化してくると思われます。
さて、代替エネルギーの話題に戻すと、、
当面のエネルギー問題を解決する代替エネルギーとしては、LNG(Liquefied Natural Gas :液化天然ガス)が注目されています。
LNGは火力発電所の燃料となるものです。
LNG自体は、他の化石燃料に比べて二酸化炭素やSOxの排出量が少ないことからクリーンエネルギーとしても注目され続けていました。
<参考>石炭、石油と比較したLNGの排出量
【リソース】東京ガスHPより http://eee.tokyo-gas.co.jp/eco/promo.html
埋蔵量が豊富であることから安定調達が可能であり、1960年代から日本のLNG調達は始まっています。
LNGはガス(気体)であるため、基本的に地産地消もしくはパイプラインでの輸送でしたが、それを「液化」する技術を開発し、液化で天然ガスの体積を600分の1程度まで圧縮、海上輸送を可能にできたことでLNGの大量輸入が可能となりました。
LNGは、中国やアジア諸国をはじめ世界的に需要が拡大しています。
下記のグラフは、LNGの輸入量を示したもので、全体の輸入量にして約5倍、中国、インド、韓国などの輸入量も増加しています。
<世界のLNG輸入量の国別比率>
【リソース】資源エネルギー庁『平成22年度エネルギー白書』
昨日の日経朝刊1面の海運のLNG船拡充の記事では、2035年までの世界のLNG需要の見通しは4億5400万トンとなるグラフが出されていました。今後も需要拡大は確実視されています。
こうした中で、新たにLNGではアメリカ・カナダで「シェールガス」の開発技術が確立され、いわゆる「シェールガス革命」が起きています。
シェールガスとは、頁岩(けつがん)の中に含まれる天然ガスで、アメリカ・カナダではシェールガスの商業生産がスタートしています。今後、世界各国でシェールガスの開発・生産が検討されることになりますが、環境への配慮や高コスト、地質データの不足など様々な課題が多いのが現状のようです。
米国の天然ガス生産推移、見通しは以下のとおりです。
<米国の天然ガス生産推移・見通し(種類別)>
【リソース】資源エネルギー庁『平成22年度エネルギー白書』
これをみると、アメリカでのシェールガスのシェアが拡大していくことがわかりますね。
なお、日本でも「メタンハイドレート」と呼ばれる新しい資源の利用が模索されているなど、化石燃料間での代替エネルギーが検討されています。まだ商業化が達成されていませんが、2012年度に東部南海トラフ海域において第1回海洋算出試験の実施に向けた準備を進めているところなようです。
◆LNG開発・生産、輸入までの基本的な流れと関連企業
LNGが日本に届くまでには、基本的には以下のような流れによります。
□天然ガス田の開発・生産
世界の石油メジャーそれに参画する日本の総合商社(三菱商事・三井物産)。
また、オーストラリアでは日本初の生産・開発を国際石油開発帝石が着手。
詳しくは、以下のBizBlog記事を参照。
□液化工程
液化プラントの建設として、日揮や千代田化工建設といった石油化学プラント会社が関与。
資金提供として、三菱商事や三井物産などの総合商社も関与。
詳しくは、以下のBizBlogを参照のこと。
■2011/11/11 日揮・千代田化工の四半期決算とエンジニアリング業界
□海上輸送
海上輸送は、海運大手が担当。商船三井や日本郵船が得意。
タンカー自体の製造は三菱重工業、三井造船、川崎汽船などが担当している。
詳しくは、以下のBizBlogを参照のこと。
□受入れ基地
LNGタンクでLNGを受入れ。
タンク建設には、IHIや川崎重工業などが担当している。
なお、昨日の日経朝刊1面のスマートメーターの隣の記事には「海運、LNG船を拡充」の記事が掲載されていましたね。
記事によれば、商船三井で70隻⇒100隻(2020年まで)、日本郵船で63隻⇒80隻(2016年度まで)とする予定だそうです。
◆今後の再生可能エネルギーについて
上記のLNGを中心とした化石燃料による代替エネルギーではなく、非化石燃料としての代替エネルギーの模索も行われ続けています。
その中心的な役割を担ってきたのが「原子力」ですが、福島第一原発事故を契機に風力や水力、太陽光等の再生可能エネルギーに注目が集まり始めています。
電源別による国別の構成比は以下のとおりです。
<電源別電力供給構成の比較>
【リソース】資源エネルギー庁『平成22年度エネルギー白書』
フランスが原子力に突出しているのがわかりますね。
一方、各国とも再生可能エネルギーの割合は低く、今後の引き続き課題であることがわかります。
各国の再生可能エネルギー等の一次エネルギー供給に占める割合は以下のとおりです。
<各国の再生可能エネルギー等の一次エネルギー供給に占める割合>
【リソース】資源エネルギー庁『平成22年度エネルギー白書』
上記の割合をみると、スペインでは風力が高く、全体としては水力とバイオマスが高いことがわかります。
ドイツではバイオマスが4.2%、中国ではバイオマスと廃棄物で9%の一次エネルギーを確保しています。
バイオマスは「カーボンニュートラル」といって、追加的な二酸化炭素を発生させないことから注目されているクリーンエネルギーでもあります。
最近の報道だと「風力」が注目されつつあるようですね。
◆効率的なエネルギー利用
上記のような「エネルギーをどのように調達するか」といった課題と並行して、「エネルギーをどのように利用するか、効率的に利用できるか」といった課題も克服していく必要があります。
エンジンの燃費効率の向上やボーイング787といった機体そのものの軽量化による燃費効率などの最終消費部分での燃費技術の向上もエネルギーの効率的な利用の課題克服としての1つのテーマと考えられます。
それに合わせて、各家庭・ビル⇒街⇒国といった大きなスケールで「スマートグリッド構想」は効率的なエネルギー利用を可能にしようとするものです。
その第一歩としてスマートメータの設置は重要なインフラ投資であり、いよいよスマートグリッド構想の本格稼働が予見されるようになってきたというところでしょう。
今後もスマートグリッド関連やエネルギー関連の展開に注目していきたいところですね。
以上
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