現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
日経朝刊17面に、SPA型アパレルのポイントの3月~11月期の業績が掲載されていたので、今日はこの話題から。
<2011年12月13日 日経朝刊17面>
ポイントの2011年3~11月期の連結営業利益は前年同期比1割強減って100億円前後になった公算が大きい。主力のカジュアル衣料専門店で女性向け商品などの販売が伸び悩んだ。積極出店に伴い、人件費が増えたことも負担になったもようだ。
売上高は820億円前後と、1割増えたとみられる。国内では主力ブランドの「ローリーズファーム」など96店を出し、11月末の店舗数は780を超えた。9月には福岡市内の商業施設に大型店「コレクトポイント」を出店した。ただ既存店売上高は振るわず、3~11月期は前年同期比で約4%減った。他の有力専門店との競合が激しくなっているうえ、今秋から気温が高めに推移したことも逆風となったようだ。<中略>
ポイントは既存店のテコ入れを狙い、商品開発や調達に優れた人材の強化を急いでいる。外部の人材登用による人件費の増加や、テレビCMなどの広告宣伝費の積み増しも採算を悪化させる一因になったとみられる。
<以下、省略>
<記事はここまで>
ポイントは女性衣料ブランド「ローリーズファーム」を展開しているSPA型のアパレルになります。SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)型とは、ファッション商品の企画から生産、販売までの機能を垂直統合したビジネスモデルです。「SPA」の由来は、米衣料品大手GAPの会長が自社の業態を表現するのに用いたことから始まります。日本語訳では、「製造小売業」と訳されることが多いですね。
SPA型の代表格といえば、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングでしょう。あとは、2005年に非上場化したワールドもSPA型のアパレルと言えます。
上場しているSPA型企業は、ファーストリテイリング、ポイント、パル、ハニーズとなります。パルは、関西圏を拠点とするSPA型企業で、雑貨販売の「3coins」を展開しているのでも有名です。
<SPA型アパレルの比較>
ファストリ | ポイント | パル | ハニーズ | |
証券番号 | 9983 | 2685 | 2276 | 2792 |
直近売上高(百万円) | 820,349 | 105,893 | 60,417 | 55,630 |
直近営業利益(百万円) | 116,365 | 15,329 | 5,083 | 3,575 |
直近営業利益率(%) | 14.18% | 14.48% | 8.41% | 6.43% |
海外売上高(百万円) 海外売上比率(%) |
151,308 (18.44%) |
10%未満 | 10%未満 |
4,602 (8.27%) |
個社財務情報(当社DB) | ファストリ.pdf | ポイント.pdf | パル.pdf | ハニーズ.pdf |
比較財務情報(当社DB) | SPA型アパレル上場4社比較.pdf | |||
ブランド等 | ユニクロ、g.u |
ローリーズファーム |
チャオパニック他 | COLZA他 |
※パルは、「衣料事業セグメント」の売上高・営業利益。3coinsを中心とする雑貨事業売上が12,776百万円。
パルは、多ブランド展開により、流行等による業績変動性を抑える経営をしているのが特徴的です。
上記のSPA型アパレルとしては、海外展開を積極的に行っているのはユニクロとハニーズ。
ユニクロはファストファッションとして米国GAP、FOREVER21、スウェーデンのH&M、スペインのインディテックス(ZARA等)と並んで世界ブランド展開を目指しています。
また、ハニーズも中国展開を加速させています。平成23年5月期で、中国の直営208店舗、FC23店舗を展開しています。
◆他業態との比較
アパレルとしては、上記のSPA型以外に、セレクトショップ型(仕入型)、通販型、メーカーに大きく分類することができます(それ以外にも紳士服、ベビー、ジーンズ、インナー等もある)。
ここでは、SPA型代表のファストリ、仕入型代表のしまむら、通販代表のニッセンHD、メーカー代表のオンワードHDで比較してみましょう。
<業態別アパレルの比較>
ファストリ | しまむら | ニッセンHD | オンワードHD | |
証券番号 | 9983 | 8227 | 8248 | 8016 |
直近売上高(百万円) | 820,349 | 440,100 | 137,392 | 234,201 |
直近営業利益(百万円) | 116,365 | 39,848 | 3,196 | 4,557 |
直近営業利益率(%) | 14.18% | 9.05% | 2.33% | 1.94% |
海外売上高(百万円) 海外売上比率(%) |
151,308 (18.44%) |
10%未満 | 10%未満 |
39,225 (16.03%) |
個社財務情報(当社DB) | ファストリ.pdf | しまむら.pdf | ニッセンHD.pdf | オンワードHD.pdf |
比較財務情報(当社DB) | 業態比較アパレル上場4社比較.pdf | |||
ブランド等 | ユニクロ、g.u |
しまむら |
ニッセン | 23区、組曲、ジルサンダー、ジョゼフ、Calvin Klein、Paul Smith他 |
※ニッセンHDは、金融事業による売上2,007百万円を含みます。保険代理、クレジットカード等の事業です。
※オンワードHDは、「アパレル関連事業」セグメントの売上・営業利益を計上。オンワードはその他にリゾート事業、物流事業等を行っています。
海外展開しているのは、ユニクロとオンワードHDになります。
オンワードHDの海外売上は欧州で売上30,172百万円(2011年2月期有価証券報告書セグメント情報より)と海外売上高の大半を稼いでいます。欧州人気ブランドのジルサンダーやジョゼフ、Paul Smithのレディースを傘下に収めているため欧州の売上比率が高くなっています。なお、日本でのPaul Smithのレディースウェアのサブライセンシーはオンワードとなっています(マスターライセンシーは伊藤忠商事で、メンズは伊藤忠の子会社がサブライセンシー)。
業態別では、SPA型のユニクロの利益率が最も高いことがわかります。
世界では、ファストファッションが流行しており、「流行性」「短期サイクル」「低価格」を実現するためにSPA型で事業展開するのが主流となっています。
ただし、ファストファッションの老舗GAPをはじめ、H&MやZARAなど売上1兆円規模のライバル企業もあり、競争は激化すると思われます。
こうした中で、ヒートテックをはじめ、高品質の素材を生かした衣料の開発など、ユニクロ独自の展開を見せているのも特徴的です。
次いで、しまむらが2位となっています。しまむらは、物流コストの削減等を徹底しており、低い販管費比率を達成しています。
直近でユニクロ37.7%であるのに対し、しまむらは23.7%であり圧倒的なコスト削減を実現しているといえます。
通販のニッセンHDは、営業利益率が2.33%と苦戦しているのがわかります。ECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥディが直近で営業利益率25%程度を稼いでいるのに比較しても相当苦戦していますね。
今日の日経朝刊の同じ17面に「ニッセンHD47%減益」の記事が掲載されています。東日本大震災の特別損失計上等により当期純利益の予想が15億円程度になると発表してますが、経常利益ベースでみても24%減少の21億円となる見通しです。12月上旬まで暖かい日が続き、冬物衣料の販売が低迷し、原材料価格の上昇も加わったことで原価率が悪化しているようです。
通販系は多額の広告宣伝費をかける必要があるだけでなく、クレジットカード等の支払手数料や通販本の設置手数料等の負担もあり、販管費比率も高まりやすい業態です。
ニッセンHDでも、2008年12月期から2010年12月期まで、販管費比率は51.9%⇒49.9%⇒49.0%と高止まりしています。
業界全体として競争が激しいアパレル業界。
製造を担う中国の人件費高騰や原材料の高騰など、仕入・開発のコスト上昇圧力は高まっている中で、共同調達・仕入れ、共同物流等の模索が活発化されることが予想できます。また、これに伴い積極的なM&Aも期待されます。売上1,000億円程度の会社が多いアパレル業界なので合併等により、3,000億円~5,000億円程度の規模まで拡大できると、調達コストの低減が相当図られるのではないかと思います。
ただし、アパレル業界はデザイナーやブランドイメージの強い消費財でもあるため、どこまで業界再編が進むかは不透明な部分はあります。
ビジネスモデルの転換、海外展開など今後も注視していきたい業界ですね。
以上
【関連記事】
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。