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マツダが仕掛けた「第3のエコカー」が最近注目されてますが、今日は日産のこんな記事から自動車業界を概観してみます。
<2011年10月29日 産経新聞>
日産自動車は29日、超低燃費のガソリンエンジンを搭載したコンパクト車を早ければ来年中にも発売する方針を明らかにした。ガソリン1リットルで30キロ前後走行できる燃費性能を目指す。超低燃費のガソリン車は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)に続く“第3のエコカー”とも呼ばれ、マツダなどが積極的に展開。この分野に日産が参入することで、業界内のエコカー競争はガソリン車でも本格化することになる。
新型車は、排気量が1000~1300ccのコンパクト車。3気筒のエンジンに、空気を圧縮してエンジンに送り込む「スーパーチャージャー」という過給器を取り付ける。これによって、最も燃料を無駄遣いする走り出し時の燃費が改善し、トータルで低燃費を実現できるという。
超低燃費ガソリン車を同じ燃費基準で比べると、マツダが今年6月に発売したコンパクト車「デミオ・スカイアクティブ」が1リットルで30キロ走れるほか、ダイハツ工業の軽自動車「ミラ イース」は32キロ。いずれもトヨタ自動車のHV「プリウス」の38キロに近づく燃費性能だ。日産のコンパクト車は、マツダとほぼ同水準の性能を出すことになる。
HVで先行するトヨタやホンダに対し、日産はこれまでEVをエコカー戦略の中心に据えてきた。昨年12月には量産型EVの「リーフ」を発売し、人員や費用を集中的に投じたEV開発にひと区切りがついた。
このため日産は、新たにHVや、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)を強化する方針を示していた。それに加えてマツダがリードする「第3のエコカー」にも本格参入し、品ぞろえを拡大。全方位のエコカー戦略を進めることで「技術の日産を再びアピール」(同社首脳)するとしている。
【リソース】ヤフー・ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111030-00000508-san-bus_all
記事にもあるように、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)に続いて、「第3のエコカー」として注目されているが、超低燃費のガソリンエンジン。
どちらかというと、EVやHVに出遅れ感の強かったマツダが巻き返しとして、ガソリンエンジンの再改良に着手。この結果、超低燃費のガソリンエンジンを開発し、「第3のエコカー」と注目を浴びるようになりました。
さて、そんな自動車業界について、簡単に概観してみようと思います。
会社名 | トヨタ自動車 | ホンダ | 日産自動車 | スズキ | マツダ | 三菱自動車 |
売上(百万円) |
18,993,688 | 8,936,867 | 8,773,093 | 2,608,217 | 2,325,689 | 1,828,497 |
営業利益(百万円) |
468,279 |
569,775 |
537,467 | 106,934 | 106,934 | 137,266 |
主な資本・業務提携先 |
ダイハツ工業(子会社) 富士重工業(16.4%) |
独立系 |
ルノー連合 | フォルクスワーゲン連合(ただし、資本提携解消の方向) | 旧フォード連合。現在はフォードがマツダ株売却で関係希薄。 | 三菱グループ |
主な技術提供 |
マツダ(ハイブリッド技術) |
独立系 | マツダ、スズキ、三菱自動車等と相互OEM |
マツダ、三菱自動車等にOEM |
トヨタからハイブリッド技術。 その他OEM等あり。 |
スズキからOEM。日産とは軽自動車合弁合意(2011年5月) |
特徴点 |
世界トップ企業。ハイブリッド車、電気自動車など広範。現在は凍結しているがいすゞ自動車のディーゼル技術の共同開発も。 |
世界の二輪車のダントツ。 ハイブリッド車を投入。 |
日産「リーフ」で電気自動車を投入。ハイブリッド車も。 |
軽自動車が強い。独立性の意識が高く、VW社との資本提携も問題になっている。 |
EVとHVに出遅れ感があったが、『第3のエコカー』を仕掛け巻き返し。トヨタとHV技術のライセンス契約も行いHVを確保。 |
電気自動車「アイミーブ」を投入。2004年に起こったリコール問題もひと段落。 |
9月末までの販売台数 |
845,828台 |
374,485台 |
444,547台 |
412,633台 |
147,684台 |
115,858台 |
※販売台数は社団法人日本自動車販売協会連合会が公表している「ブランド別新車販売台数確報2011年9月」の累積より。トヨタ自動車はレクサスの販売台数も含めている。
国内の自動車販売数はジリ貧で減少傾向にあります。
【リソース】社団法人日本自動車販売協会連合会が公表している統計数値より筆者が加工。
去年はエコカー減税効果もあって持ち直してますが、今年は2011年9月までの販売台数は前期比74.4%と大幅減。
エコカー減税分の先食いだったといえます。
どのメーカーも海外販売に活路を見出そうとしてますが、現在の円高状況もあって、海外販路拡大だけにも限界があるのも事実で、OEM構築だけでなく資本提携や業界再編といった動きが出てくる可能性も否定できないと考えられます。
なお、トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、三菱自動車、富士重工業、ダイハツ工業の大手8社の比較財務諸表は次のとおりです。
【リソース】IKP財務データベース
◆トヨタ自動車と日産自動車の比較
これをみると、トヨタ自動車の利益率の低さが目立ちます。
そこで、トヨタ自動車と日産自動車だけの収益構造比較すると、面白い状況が見えてきます。
まずは、トヨタ自動車と日産自動車のそれぞれの4期分の財務情報は以下のとおりです。
【リソース】IKP財務データベース
過去4期で見ると、2008年3月期にトヨタ自動車が歴史的な2兆超えの営業利益を出したのを最後に、翌年のリーマンショックによる4千億の営業赤字を出し、その後は0.78%、2.47%と低い利益率となっています。
一方で、日産自動車は、トヨタ自動車と同様、リーマンショックで2009年3月期に営業赤字となるものの、その後は、4.15%⇒6.13%と高い営業利益率をキープしているのが特徴的です。
2011年3月期では売上規模が2倍以上離れているにも関わらず、日産自動車の営業利益がトヨタ自動車の営業利益を超えました。
さらにこれをセグメントで見てみると、トヨタの営業利益に占める金融事業利益の依存度が高まっていて、本業の自動車では十分な利益が挙げられていないというのが見えてきます。
営業利益の自動車事業と金融収益事業の寄与率を示したのが次のグラフです。
【リソース】各社有価証券報告書のセグメント情報から筆者が加工。
かつては原価改善のお手本企業と称されていましたが、米国のリコール問題といった突発的な要因はあったにしても、本業での利益率の低さが目立ちます。十分なリストラが出来ていない証左なのでしょうか。
雇用等も含めて政策的な影響を受けやすいとは考えられるので、大企業の苦しいところではあるのかもしれませんね。
ただ、このままでは、GMのような感じになってしまわないかと、子供のころから実家の車がトヨタだった筆者としては、心配でなりません。
以上
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